• 6月16日(火)続き(3)

    適当な時間になったので一度ホテルに戻り、土産を買ったりとカタルーニャ広場周辺を散策することにした。
    さすがに夕方ともなると人出は更に増し、フラメンコを踊る女性等、大道芸人があちこちに見掛けられる。
    似顔絵等絵を売る者も結構居る。
    そんな中の一人が私に声を掛けてきた。
    曰く「金は要らないから描かせてくれ、デモンストレーションに協力してくれ」との事。
    彼の絵はなかなかクセの強いデフォルメをした似顔絵である。
    こんな機会は珍しいので二つ返事でOKした。
    話をしながら似顔絵を描いて貰う。
    偶然というか何と言うか彼はスイス人の漫画家だったのだ。
    私は日本で漫画を描いていると言うと、彼は「MANGA?」と。
    どうやら日本の漫画はcartoonでは無くMANGAと独自の物として認知されているようだ。
    だが彼は「MANGAはあのでかい目が好きじゃ無い。」と。
    まあ、分からなくも無い。「でも、あのスピード感は参考になる」とも言っていた。
    そんな話をしながら似顔絵を描いていると周りに人だかりが出来てきた。
    彼はもの凄いスピードで鉛筆を走らせ、完成が近付いてくると口数も少なくなり、その表情も集中した物となってくる。
    野次馬が彼の絵と私の顔を交互に見て感心したりニヤニヤしたりする。どんな絵が描かれているのだろう?

    暫くして絵は完成した。
    見せてくれたその絵は嫌味なまでに私の特徴を捉え、デフォルメされた見事な物であった。
    まさにプロの技であった。
    この絵なら是非とも買いたいと思った私の心を見透かしたように彼は「君はこの絵を買うことは出来ない、これは私のコレクションだからね。 協力してくれて有り難う」と先手を打たれてしまった。
    彼と別れるともういい時間になっていたので夕飯を食う場所を探した。
    昨日のマルセイユではブイヤベースを食い損ねたので今日は何としてでもパエリアを食ってやろうと。
    ホテルに近いレストランでパエリアと書いてある店があったので取り敢えずそこに入って椅子に座った。
    ボーイが来たので英語のメニューはあるかと聞いたらそれだけは通じたが彼は英語が分からない様だ。
    メニューを見て「パエリアをくれ」と言ったが「パエリアじゃ分からない」という様な事を言う。
    スペイン語なので朧気にしか分からない。
    どうやらこのメニューにあるパエラというのがそれらしい。
    種類が幾つかあるがシーフードを沢山使っていると思われる「フィッシャーマン」というのを頼んだ。
    料理を作っている間に近くの売店でスポーツ紙を買ってきてビールを飲みながら読んだ。
    文章は分からないがW杯の記事や、二輪のWGPのリザルト等固有名詞を拾って見てるだけでもなかなか楽しい。
    出来てきたパエリアは予想通りシーフードたっぷりで量はもう日本なら間違いなく「大盛り」と注文しなければ出て来ない様な量である。
    味の方は最高に美味かったので何とか食べ切れたが最後の方は休み休みやっと詰め込んだといった感じだった。

    明日は早いのでホテルに帰ると荷物を整えてシャワーを浴びてすぐに寝た。
    ここ3日ほど夜行列車の中でしか睡眠を取っていなかった上にスト騒ぎで睡眠を妨げられた等疲れが溜まっていたせいか電気を消したとたんに気絶した。 


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