00年9月24日(一日遅れ)
負けた負けた負けた!
当然シドニー五輪のことである。
マスコミは「メダル」とか散々言っていたが、結果はベスト8で
終わってしまった。
まあ、実力通りというのが私の正直な感想である。
前回アトランタ大会を上回る成績だったのは救いといえば救いか。
確かにあの時のチームよりは強かったとは思うが、二勝しかしていない
という点で見れば一緒の成績と言えなくもない。
まずは負けた対アメリカ戦を中心に私なりの総括をしてみようと思う。
最後のPK戦で中田がPKを外したのは別としても、今回の中田は
調子が悪かったようだ。
守備やポジショニングの妙は魅せたものの、とにかくキックの精度に
問題があった。
得意のスルーパスはFWに合わせることが出来ずにラインを割ることも
少なくなく、クロスパスも相手の頭上を遙かに越えることがしばしばだった。
だが、彼を替えて他の選手を入れるにしても「誰を?」となる。
不調とは言え、彼に代わる選手は居ないのだ。
対アメリカ戦で先制点をあげた柳沢は大会を通して最も矢面に立った
選手ではないだろうか?
同じFWの高原が開幕戦の南アフリカ戦で2得点し、他にも強引な
突破でその存在感を大いにアピールしたのに比べ、質の高いポジショニング
フリーランニングでスペースを作ることで大いに貢献はしたものの
シュートは枠に飛ばず、と言うよりシュート自体が少ないというFWと
しては物足りなさを感じさせた。
私は柳沢のクレバーなプレースタイルは大好きなのだが、今回の大会は
はっきり言って高原のワントップで戦うべきではないかとず〜〜〜〜っと
考えていた。
さて、4戦通しての問題だが、大会前の壮行試合、対クウェート、モロッコ
戦で非常にバランス良く機能し、トルシエ自身も「本大会はワントップでいく」
とまで言っていたのに何故本大会ではツートップに戻して、しかもあからさまに
”当たっていない”柳沢をスターティングイレブンに起用し続けたのだろうか?
これは前線からの守備を重要視したからに他ならない。
ツートップだと最前線に二人居るために相手が最終ラインでボールを
回している時のパスコースの限定がやりやすいのである。
また、柳沢は鹿島仕込みでそういったプレーを得意としている。
こういったことが4戦を通してツートップを選択した理由と言えよう。
分かりやすく言えば守備重視のツートップ、攻撃重視のワントップと
いうことである。
また、南アフリカ戦からDFラインを壮行試合までの布陣
左から中田、松田(宮本)、森岡とせず、左から中田、森岡、中沢とした。
これはテストマッチを含めても初めての布陣ではないだろうか?
おそらく中沢の身体能力を重視したものと思える。
中田、森岡、宮本、松田はいずれも守備力だけでなく前線へのフィードも
定評があるが、中沢に限ってはその限りではないからだ。
以上のように五輪本番バージョンの布陣はとにかく守備重視の腰の引けた
ものであったと判断出来る。
また、トルシエの采配も非常に腰が引けたもので、特に最後の対アメリカ戦
等は最たるものであったと言えよう。
一番分かりやすい例を挙げれば、攻撃のジョーカーとも言える本山を何故
起用しなかったか。
後半も半ばに差し掛かると日本は勿論だが、アメリカの足も止まってきて
中盤には大きなスペースがあった。
ここに生きのいい本山を投入すれば彼の持ち味であるスピードのあるドリブルが
生きる最も良い状況だったのである。
また、これまではこういった用兵はトルシエJAPANの定番でさえあったのだ。
おそらく私を含め日本中のサッカーファンが「本山出せ〜〜〜〜!」と
テレビの前で思ったことであろう。
勿論これだけが敗因では無いと思うが、持てるカードを出し尽くすことなく
敗れた結果に「全力を出しました」等と誰が納得するだろうか?
PKを外した中田、二度の超決定機を外した高原、そして終始ジャッジの基準が
不明瞭であった審判陣(トドメはロスタイムのPK、私はあのPKはちょっと厳しい
と思っている。)等々直接の敗因は数々あるが、私はトルシエの采配に最大の
不満を感じた。
オリンピックを観る直前に欧州選手権を観たせいだろうか?
大会のレベルははっきり言って低かった。
まだ準決勝、決勝とあるので勿論全ての試合を観たわけではない。
が、それでも私が観たどの試合もパスのスピード、精度、ともにJリーグと
大差なく、リーガ・エスパニョーラ、セリエA、プレミアリーグ等の上位チームなら
楽に優勝できてしまうのではないだろうか?
と思えるほどだ。
優勝候補筆頭と言われたブラジルも見かけ倒しで結局日本と同じくベスト8で
敗退してしまった。
恐らくこの敗退でブラジル代表監督のルシェンブルゴはクビだろう。
話は戻って、アメリカ戦である。
確かに負けはしたが勝てる相手だったと思う。
十回戦えば六回は勝てる相手、それが私のアメリカ五輪代表に対する感想であった。
確かにフィジカルは日本より明らかに上だが、サッカーを知っている、気の利いた
プレーが出来ると言う点では明らかに日本の方が上を行っていた。
確かに組織力はあった。攻撃における約束事は日本よりしっかりと
なされていたようだ。
まあ、この辺は監督の責任だが…
何よりも精神力で日本は負けたと思う。前の試合で後半はブラジル相手に攻め
まくったという自信がサッカー後進国アメリカをなめてしまっていたように
前半のプレーの端々から感じられた。
後進国と言う点では日本だって一緒なのに…である。
延長戦に入ってアメリカの選手は足をつらせていた。
それでも日本より運動量はあったのだ。
選手の交代枠も使い切りそれこそ打てる手は全て打って勝利をもぎ取りに来ていた。
対して日本は打てる手も打つべき手も打たず、手をこまねいていた。
「良い試合であった」が、それは日本語輪代表に向けられる言葉ではなく、
見事に持てる力全てを出し尽くしたアメリカ五輪代表チームに向けられるべき言葉で
あろう。
いや、彼らに対しそんな言葉は無用だろう。「おめでとう、素晴らしかった」
これで充分だ。
最後にトルシエJAPANの象徴とも言えるフラットスリーという戦術について
言っておこう。
一般的なツートップのチームに対してはなかなか有効な戦術で、私も結構好きなのだが
どうも今回アメリカが後半スクランブルを掛けてきた時のように3トップを敷いてきた
チームに対しての対処法があまりに心許ない。
欧州選手権を見た限り、世界の潮流はほぼ3トップに近い1トップへとより攻撃的に
シフトしているようだ。
そんな中、日本の、と言うよりトルシエの戦術は時代にそぐわないように感じられた。
フランスW杯の時にも思ったのだが最終ラインは4人というのがもっとも
バランスが良く、融通も利くように思える。
事実欧州選手権でも上位チームはどこも4バックを敷いていた。
フランス、オランダ、ポルトガルといった国々がやっていたような左右にやや
引き気味のウィングをおいたワントップという攻撃的な布陣を敷いたチームとは
今回の五輪では対戦することが無かったが、それに近い布陣を敷いてきた南アフリカ
には左右のサイドハーフが引っ張られ最悪の5バックとなってしまい、後手を踏み
攻撃の形が全く作れなくなってしまっていた。
これは98年のW杯の時の状況と全く変わっていない。
もっと酷い言い方をすれば全く進歩していないとさえ言えるのではないだろうか?
2002年はもうすぐである…