11月27日
コトの始まりは金曜日の夜、妹からの電話だった。
「明日仕事?」
「いや、別に仕事じゃないよ」
何でも家を新築したので引っ越しの手伝いをして欲しいとのことだ。
予定では妹の旦那、つまり私の義弟の兄(こういうのを
何て言うんだろう?)が手伝う予定だったが仕事の都合で
来れなくなったらしい。
そこで私に白羽の矢が立ったということだ。
正直言って面倒なのだが話の流れ上、断るわけにもいかず
結局行くことになった。
朝の10時集合とのことなので遅くとも家を8時半には出なければ
ならない。
普通の人にとっては遅いとさえ言える時間だが、私にとっては
丁度ぐっすり眠ってる時間である。
当然前の日は早めに寝るのが正解なのだが何かゴタゴタしている
内に寝たのはいつもの就寝時間である4時過ぎになってしまった。
まあ、4時間寝れば何とか昼間ぐらいは持つだろう。
アラーム音で目が覚めた。
目覚ましの音だと思ったが、どうやら電話の呼び出し音のようだ。
寝ぼけた頭で出ると妹だ。
「モーニングコールのつもりかな?」何て思っていると
集合を30分早くして欲しいと言う。
どういう訳か私の頭では目が覚めたのは目覚ましをセットした
時間だと思い込んでいて「今から出て10時ギリギリだ」と
ちょっと不機嫌な声で言った。
電話を切ってから時計を見ると目覚ましのセットした時間より
一時間半も早い。
頭が混乱していたんだなぁ。
せめてもう一時間寝ようと布団に潜るが眠れない。
仕方ないので布団から出てかなり早めではあるが家を出た。
結局2時間半しか眠れなかったことになる。
大丈夫か?俺・・・・
集合場所であるJR西八王子駅に着いたのは約束の時間
にはまだ早かった。
西八王子の駅はもう随分と久しぶりになるのだが
田舎臭さは全然変わっていない。
そういえば妹の話だと「まだ百円ラーメンはやっている」
らしいな等と思いながらも取り敢えず目に付いたマックで
軽い朝食を取る。
百円ラーメンのお店はまだ開いていない時間だからね。
集合時間になったので妹の新居に向かう。
線路際にある妹の新居に近付くと線路を挟んだ向かいにある
マンションが目に付いた。
そういえばこのマンションは高校生の頃に付き合っていた
娘が住んでいて、何度かお邪魔したなぁ。
彼女は西八王子駅前のドムドムバーガーでバイトをして
いたのでよくハンバーガーをたかっていたなぁ。
なんて思いだしてしまった。
新居に妹夫婦と甥が待っていた。
会うのは約一年ぶりだが二人とも少し痩せたような気がする。
義弟は元々太いので良いことなのだが、妹は元々細かったので
「苦労してるのかなぁ」なんて思ったら
「子供に吸い取られた」だとさ。
母親ってよくそういうことを言うので、まあそうなんだろう。
甥は・・・・俺のことを全然覚えていないみたいだ。
まあ、あの年で一年ぶりじゃあ仕方ないかな。
新居はさすがに綺麗だ。
しかもなかなかの広さ。
兄は貧乏暮らしをしているのに・・・・
世の中の縮図だね。
後から母親も来て一緒に片づけをする。
そしてちょっとお茶タイム。
するといつものように母親、妹と揃って「あんた結婚しないの?」
ときたもんだ。
「はいはい、そのうちね」とこれまたいつものように答えるのだが
今回は心の中で思っていることがちょっとだけ違った。
「結婚ねぇ、いやマジでしたかったよ。あのヒトと・・・・」
なんて冬の空を見るのだが轟音と共に視界を遮ったのは
オレンジ色のにくいヤツ!(古すぎ)
そう、窓のすぐ外を走っているのは中央線、駆け抜けているのは
特別快速高尾行き。
俺には感傷的になることさえ許されないのか。
確かにキャラじゃないけどさ。
一息つくと義弟と一緒に彼の実家に荷物を取りに行く。
彼の実家は八王子の東の外れ、多摩テックとか中央大学とかある
結構山奥だ。 一応バリバリの新興住宅街なんだけどね。
久しぶりに八王子を車で走ると新鮮だ。
だって田舎なんだモン。
ほんの十ウン年前まで自転車で走り回っていたこの道はこんなに
田舎臭い風景だったのかと感動してしまう。
なんて偉そうに何様だ、俺!
そして義弟の実家に着くと彼の父親が明るく出迎えてくれた。
妹の結婚式以来なので当然お互いの顔なんか覚えていない。
ましてや結婚式の時の私は現在と違い、長髪をジェルで
なでつけたオールバック、しかも髭面という誠に怪しいスタイル
だったのだ。
今は爽やかだよ(自称)
顔は覚えていなくてもお父さんは明るいし、俺も決して人見知り
するタイプではない。
一緒に問題なく和気藹々と引っ越しは進んでいき
私のやることも無くなってきたのでいったん俺と母親は
実家に帰ることになった。
実家に帰ると丁度テレビでは浦和レッズのJ−2落ちが決定した
瞬間を映し出していた。
J−リーグで一番人気のあるチームが二部落ちするってのも
何か不思議な感じがするが、それ以上に小野の来シーズンが
不安になった。
彼の才能をJ−2で燻らせるのは日本サッカー界にとって
大いなる損失であることは誰の目にも明かだろう。
頼むから小野をJ−1でプレーさせてやってくれ。浦和レッズ!
レンタルでもいいから・・・・
一息ついたところで家路につくとするか。
おっと八王子に来たからにはあるモノを忘れちゃいけない。
そう、今月の始めモバイルPCと一緒に紛失した”都まんじゅう”
である!
それを買って馴染みの古本屋を回るとある一冊の本を見つけた。
以前から探していた坂口尚著「あっかんべェ一休」全四巻
のうちの第四巻である。
しかも値段は400円と予想外のバリュー価格である!
当然買いね。
他にも別の古本屋でやはり探していた同じ坂口尚著の
「VERSION」全三巻揃いを見つけたが、プレミアが
ついていて3冊で何と六千円もしやがる。
ちょっと手が出ないので今日のところは勘弁しといてやろう。
電車の中で「やっぱり坂口尚は素晴らしいなぁ」と感動しながら
先程買った「あっかんべェ一休」を読んで家に帰った。
家に着いて早速メールチェックをすると何やら予想だにしない
メールが!
「やっぱり貴男が好き、結婚して」とあのヒトから・・・・
ってのは大嘘で、数日前にとあるサイトで捜索依頼した
「あっかんべェ一休」の全四巻揃いを譲ってくれるという話だ。
偶然今日、第四巻を買ってしまいダブってしまうがそんなことは
些事だ。
寝不足もぶっ飛ぶぞ。
緑茶が切れているので都まんじゅうを食べながら紅茶で乾杯した。
たったこれだけのことで「実りある一日」と感じてしまう俺は
安上がりなのだろう。
お、我がアントラーズが最終戦に勝ったか。
よしよし、たった今俺は世界一優しい男だぞ。
きっと・・・・