• 6月10日(水)続き(1)

    やや、スタジアム行きのバスに乗るために迷ったが何とか試合開始2時間前には会場に着いた。丁度その時は土砂降りでオフィシャルの現地事務所のあるビルの前で雨宿りをしていた。
    すると隣には東洋人が、日本人かと思って話し掛けてみると何と香港人だという。やはり彼もチケットは持っておらずダフ屋から買うという、雨が上がると別れてしまったが彼はちゃんと試合を観れたのだろうか。

    「I need TICKET」と大きく書かれた紙を持った人が何人もうろついている。その割に売っているダフ屋らしき人はなかなか見当たらない。見掛けるのは強面のセキュリティばかりだ。私に声を掛けてくるのはチリのユニフォームを着た人ばかりで「チケットは余っていないか」といったものばかりであった。
    そんな状況に私も慌ててしまった。もしかして結構ヤバイのでは・・・と。そんな時どちらからともなく声を掛けた最初のダフ屋からチケットを買ってしまった。2,000フランと言っていたのを1,700フランに値切って買った。
    ちょっと高いかなとも思ったが席も悪くなかったし、観れ無いよりマシかとの思いもあったので良しとしよう。
    その後見掛けたダフ屋に値段を聞いても同じ様な値段だった。
    スタジアムの前では日本人のカップルがチケットをゲット出来ずに途方に暮れていたが・・・

    スタジアムの入り口は異様なまでに渋滞していた。自分が入場する段になって初めて分かったのだが一人一人を強面の治安部隊の隊員が念入りにボディチェックをしているのだ。
    予想はしていたが私は日本国内の試合のボディチェックでの経験からたかを括り、キーホルダー代わりのナイフを持っていたのだが甘かった。一応隠してはいたのだがあっさり見つかってしまい問答無用で没収されてしまった。取り敢えず鍵だけは返して貰ったのだが最近買ったばかりのナイフは一ヶ月足らずで私の手元から無くなってしまった。私が迂闊だったと言わねばなるまい。安物だったのがせめてもの救いか。

    その試合は前菜と呼ぶには余りに魅力的なカードだった。
    実際競技場のシートに座るまでは前評判に劣るもののサポーターのテンションでは圧倒していたチリに心惹かれていた。
    が、隣の席にに座った10代後半と思われる金髪の女の子は可愛く、連れの女性も美人だった。更に隣には頭のちょっと薄くなった中年男性が、そうやら家族のようだ。よく見ると年上の女性はぱっと見より年はいってそうだ。女の子の母親のようだ。でも若く見えるなあ。
    話し掛けようと思っていたら向こうからイタリア語で話し掛けてきた。私が英語しか分からないと言うと英語でチケットの値段のことを尋ねてくる。話をするとどうも彼等が売ったチケットを私が買ったようだ。彼等一家はイタリアのベニスの側の小さな街から来たと言っていた。
    お父さんは比較的大人しく、母娘の方が元気だ、特に娘の方は近くに座っていた叔母さんに笑われるくらい熱狂的だった。
    これはもうイタリアを応援するしかないだろう。
    知っている選手も多いので感情移入に難くはない。

    しかし、試合が始まってみるとイタリア代表の動きが良くない、
    むしろチリの方が中盤での動き出しが早くこの試合に対する意気込みが感じられる。
    チリがやや優勢に試合を進めていたがカウンターからバッジォの溜息が出るほど芸術的なダイレクトパスがフリーのビエリに渡り、シュートは私に近い方のゴールのネットを揺らし、イタリアが先制した。しかしこのゴールは8割から9割はバッジォのゴールと言って差し支えないだろう。
    こういったそつの無さはイタリアらしいと思わせる展開である。
    この一点でやや動きの良くなったイタリアだがチリも選手の身体はイタリアの選手より小さいのだが接触プレーにも以外と強さを見せショートパスを中心にほぼ互角に渡り合っている。


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