• 6月10日(水)続き(2)

    前情報により予想はしていたがチリのツートップ、サラスとサモラーノの通称ZA-SAコンビが強力なのには驚いた。
    二人ともスピードに溢れ、上背は無いのだがポジショニングとタイミングの良さ、そして素晴らしいジャンプ力でイタリアの屈強なストッパーコンビと互角以上に渡り合っている。
    イタリアがやや優勢で1−0のまま前半も終わると思われたが終了間際にそのサラスのヘディングによる同点ゴールが入ってしまった。このゴールは私の席からは反対側でしかも混戦だった為に誰のゴールかは分かり難かったのだが、この時のチリサポーターのテンションは明らかにイタリアの先制ゴールの時のそれを上回っているものであった。

    スタジアムの雰囲気が盛り上がるのは結構なのだがこのゴールのお陰で隣の一家、特に露骨にがっかりしていた娘さんに声を掛け辛くなってしまったではないか。
    しかし私のそんな心配をよそにハーフタイムには彼等は私に飲み物を奢ってくれた。余りに高くチケットを買った私に気を使ってくれたのか、それとも試合前の練習の時に双眼鏡を貸した礼なのか聞くような事でも無いので有り難く頂いた。

    後半開始間もなくしてまたしてもサラスの今度は何と逆転のヘディングシュートが決まってしまった。この時この日一番の盛り上がりを見せたのは当然チリサポーターである。
    沈黙するイタリアサポーター、隣の女の子は見ていて楽しくなる程ころころと表情を変化させている。
    しかし未だ時間はたっぷりある。イタリアの選手もサポーターも比較的落ち着いてはいた。 が、チリのDF陣の出来が実に良くイタリアの攻撃を押さえている。

    残り時間も少なくなるにつれイタリアの攻撃も焦りを感じさせるロングボール使った単調な物へとなってきた、この頃になると私もすっかる試合に入り込んで、溜息をついたり一寸したミスにブツブツ独り言を言うようになる。
    キエーザとインザギというスピードコンビを投入してゴールを狙いに来るがチリのDFは引いているのでスペースが無くなかなか有効な攻撃にはならない。こういう場面ではパワーファイタービエリの方が有効なのではないかなとも思いこの選手交代には疑問を感じてしまった。
    そしてボールを奪うとチリの効果的なカウンターアタックが仕掛けられる。人数は少なくてもツートップが強力なため何度も隣の女の子に悲鳴を上げさせる。
    私も一緒に肝を冷やしながらも「決定力のあるFWを擁するっていうのは大きいんだなあ、日本にもこんなFWが居たら・・・」等と改めて無い物ねだりをしてみたくなるのだった。

    チリがDFラインでボール回しを始めると例の「オーレ!」のかけ声が掛かりだす。
     イタリアの焦りは更に大きくなってゆく。それに反比例して得点の予感は少なくなってゆく。
    残り時間も少なくなってくると諦めの早いイタリアサポーターが席を立ちだした。それからすぐである、チリにとっては何とも不運なハンドによるPKがとられたのは。
    私の席からは遠いサイドであったがそのシーンはちゃんと見えていて思わず「ハンド!」と叫んでいた。バッジォの同点ゴールが決まると私はまずほっとした。何故ならイタリアが負けた時、隣の一家に何と声を掛けようか思い付かないでいたから・・・・

    同点ゴールが決まると今度はイタリアの動きが良くなり猛攻を仕掛ける。スタンドも「イタリア!イタリア!」の大合唱である。
    間もなくタイムアップの笛が鳴り試合は2−2の引き分けに終わった。
    帰り際に隣の一家の写真を撮り[See you again atnext WORLD CUP in Japan!」と言って別れた。
    が、名前と住所を聞いて写真を送れば良かったかなと後悔したのは帰りのバスに乗ってからだった。

    帰りのバスの中は引き分けという結果の為だろう。どっちのサポーターも気勢を上げる様な事も無く静かな物だった。
    こればかりは少し残念な気もした。
    スタジアムからの帰りは臨時バスが駅まで出ていて、私の泊まっているホテルは中心街より駅に近いので助かった。
    バスを降りると見事な虹が出ていて好試合の余韻に花を添えてくれた。

    この辺で今日はお休みなさい。


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