• 98年6月14日(日)続き(3)

    諦めのいい人はもう既にオーロラビジョン観戦の為に移動している。
    我々も試合開始までは粘ろう、それでも買える値段にならない様だったらオーロラビジョンで観戦するしかないな等と話をしていた時、彼は来た。
    「チケット無いんですか?一枚だけ余って居るんですけど・・・」彼は日本サッカー協会の販売したチケットの抽選に当たり、定価で買ったのだが一緒に観戦する筈だった友人が来なかったと言う、そしてどうせならそのチケットは日本人に譲りたいと、しかも何と200フランという殆ど定価と変わらない値段で譲ってくれると言うのだ。我々は耳を疑ったがどうやら騙しているのでは無さそうだ。我々3人はジャンケンでその1枚の権利を決めることにした。私ははっきり言ってこの手のくじ運とかは無い、特にこういう重要な時にそれは顕著である。
    私はジャンケンに負け、勝者に「私の分も応援宜しく」と言って送る自分の姿を予想し、勝負に挑んだ。

    先ず一発目で女性が脱落した、そして次にライター氏が・・・・
    何と私が勝ち残ってしまったのだ。
    ジャンケンに負けた彼等は私が言うはずだった言葉を私に掛け、見送ってくれた。私はすぐにチケットの代金を払い、夢のチケットを受け取った。そして私は本気でチケットを譲ってくれた彼を拝んだ、思い付く限りの感謝の言葉を並べ続けた。
    感動で全身の感覚が麻痺していたがこれだけは聞かねばならないと思った事があった。あれだけの大勢の中から何故我々3人を選んだのかという事を、そして何故こんなに安く売ってくれるのかという事を・・・答は実に簡単な物だった。
    「いや、目が合ったからですよ。それに同じファン相手に儲ける気はありませんから」
    なんという尊敬すべき心意気、なんという偶然、そして此処一番のジャンケンに勝った私の強運。 これは間違い無く生涯最高のラッキーである。
    殆ど宝くじに当たったといったレベルではないだろうか。

    競技場ではここは国立かと思う程日本人が居た。
    まあ、アルゼンチンのサポーターも地元の人と思われる親子連れも居るには居るがやはり日本人が一番多いようだ。
    そして最も気になったのは観客席に空きがあるのかという事だったが、本当に満席だった。つまり今回のチケット不足は単なるオーバーブッキングが最大の原因だったようだ。
    後に色々と報道されてはいるが2002年にはもっと大変な事になるのではないだろうか。ちょっと心配だ。

    私の席は比較的日本人の多い所ではあるがこれまでの2戦に比べると余り良い席とは言えない。
    勿論会場に入れただけでラッキーなのだ、文句などある訳が無い。
    しかしこのフランスで、しかもW杯でこの真っ青なスタンドを見、またその中に自分が立っているというのも感慨深い物がある。
    ただ、残念ながらスタジアムは予想よりは上等とは言えない物であった。確かにサッカー専用スタジアムなのでピッチは近いのだがコーナーの辺り、私の席の辺りはあまり見やすいとは言えずもう少しスロープが急な方が観やすいだろう。
    そして何より良くなかったのはトイレの数が足りずスタジアムの外に並べられた臨時トイレを使わなければならない事だった。
    これにしてもやはり数が足りず列が出来ていた。
    後で例の二人組に聞いた話だがこのトイレの列に並んでいる村上龍を見掛けたという。別に何て事無い話なのだが何だか可笑しかった。
    私がこのトイレの列で話をした男性はオペルのツアーで来たと言っていた。やはりスポンサー関係のチケットは最も確実な様である。このスポンサー偏重は今後ますます顕著になって行くのではないだろうか。


    続き
    Home Mail