98年6月9日(火)
深夜2時過ぎ埼玉県の某所でいつものように仕事が終わり
シャワーを浴びて酒を飲んでいた。
ただ、いつもと違うのはいつもならベッドに入る筈の4時前、
私はベッドではなく大きな荷物を背負い玄関を出ていった。
成田に向けて。
上野駅から京成電鉄の各駅停車に乗っていると丁度通勤通学
時間になって来る。乗り込んでくるサラリーマンや学生さん
達に初めての海外旅行に向け浮かれ、酔っぱらった心の中で
「これからミーはおフランスに行くザンス。チミ達の分も
楽しんできてあげよう。」等と優越感に浸っていたのは
ここだけの秘密である。
始めてきた成田空港。結構天井が高いなあ、私が乗る飛行機
の会社は・・・あった。エコノミーとビジネス、ファースト
クラスは受付も別なのかあ、別にビジネス、ファースト
クラスの受付のお姉さんの方がちょっと綺麗だったとか
そういう事は無かったな。
取りあえず手持ちの現金をベルギーフラン、フランスフラン
スペインペセタにそれぞれ替えようとするがベルギーフラン
は扱っていないとの事。両替はベルギーでやるのか。
両替における手数料が意外と高いのにびっくり。
殆ど競争の無い商売なので空港に入っている銀行ははっきり
言って濡れ手に泡のぼろ儲け。もろ利権産業だなあ。
それに何だ、此処でもTCは作れるんじゃないか。数日前、
TCを作り損ねて慌てたのが馬鹿みたいだ。
でもこの作り忘れも結果論としては現金の確保が楽になった。
シティバンクのワールド・キャッシュとか言うカードに金は
入れていたのだが、これがなかなか使えるカードで欧州にある
提携のATMでそれぞれ現地の通貨でキャッシュカードと
同じように使えるので面倒が無くて実に楽ちんなのだ。
唯一心配だった提携ATMの数だがどの国にも以外とそこら
中にあり、探して歩き回るような事は無かった。
(別にシティバンクの回し者じゃないよ)
空港内をうろつき、酔いも醒めた頃飛行機に搭乗の時間となった
さすがに同じようなことを考える人は居るらしく日本代表の
ユニフォームを着た人も列の中に何人か居る。
未だ決戦までは時間があるので数えられる程だがもう2,3日も
すればヨーロッパ向けの便、いや、空港ロビーは真っ青になる
のであろう。
ジャンボに乗るとすぐに眠くなって来た。よし、予定通りだ。
うとうとしていると不味いと評判の機内食が来た、確かに美味く
はないが腹が減っているのでそう文句を言うほどではない。
ワインやビールをたっぷり飲んでまた寝るとしよう。
雲海を越えフランクフルトが近付いて飛行機が高度を下げると
爆裂的な頭痛が襲って来る!これは洒落にならん。誰か助けて
くれと泣いて叫びたい位だったがそうしたところで頭痛が収ま
るとは考えにくい、多分気圧変化による物だろうから放って
おけば何とかなるべえ、それに以前これに似た頭痛を感じた
時は肩凝りが原因だと医者に言われたので今回もそうなの
だろう。
ドイツの入国手続きをとる際、何だか話がスムーズに進まない。
ドイツ人の管理官の英語の発音は聞き取りにくい上に私は結構
酔っぱらっていたのだ。
奴ら結構怒っていたが何とか話は付き「今度来る時は酔っぱ
らって来るな」ともっともな事を言われてしまった。
まあ、私の方が悪いんだろうな、多分。
乗り換えてベルギーのブリュッセルに着いた。
しかし入国手続きとかそういった物は無い、EU内だから
なのか。
電車で市内に着き、駅を出てびっくりした。
長距離列車の中継地点でもあり結構大きな駅と思われるのだが
日本にあるような駅前商店街が無いのだ。タクシーが並んで
いるところは日本と一緒だが実に閑散としている。
取りあえずコインロッカーに荷物を預け、そこいらを徘徊して
みよう。
古い建物が並びちょっと寂れた感じなのだがとにかく街並みが
絵になるのだ。
しかし通行人がいないなあ。と思ったら周りに店は少ないので
住宅街らしい、しかも明るいとは言え夜8時過ぎなのだ。
ブッリュッセルに関する情報は全く無かったので安全なのか
危険なのかそして何語を喋るのかさえ調べて来なかった。
暫く歩くとブリュッセルには以外と黒人やアラブ系が多いのに
気が付く。移民か出稼ぎなのだろう。
なるべく細い道には入らないようにはしていたのだが何だか
雰囲気の怪しい所に迷い込んでしまった。
道端に目つきの悪いあんちゃんが屯していたりするのを見ると
ちょっと身の危険を感じたりする。
ここは隙を見せたらあかん、ときょろきょろせずにやや早歩き
で進む、絵になる路地とかを見ても人が居るときは写真を
撮ったりはしないでとにかく歩く。空が曇っているので方向が
分からないのが辛い。
路地に止まってる車に若者が何かをしている。見るとも無しに
見ているとどうやら車泥棒のようだ。やっぱ結構やばい所に
迷い込んでしまったようだ。バス停を見つけ適当にあたりを
付け何とか大通りに出た時は本当にほっとした。
通りのカフェで沢山の親父が何か飲んでいる。どうもアルコール
では無いようだ、親父達の顔と店の看板を見て納得した。
彼らはアラブ人らしい。大きな声で談笑していた。
通りにある地図を見て中心街と思われる所に向かう。
そこで初めて分かったのだがどうやらブリュッセルでは
フランス語が使われているようだ。
さんざ歩いたのでいい加減疲れてきた。
取りあえず手元にある少ない予算の中で宿を探すとしよう。
しかもなるべく駅の側で。
おあつらえ向きの所で結構怪しい親父のやっている怪しい
ホテルを見つけた。
部屋のドアは一応ちゃんと閉まるがトイレのドアは壊れていて
シャワーも出が悪い。
安ホテルってのはまあこんな物なのだろうな。
シャワーを浴びてテレビを付けるとW杯の前夜祭をやっていた
これを見るまでは多少余計なお金を出してでも直接フランス
入りして前夜祭を観るべきだったのではと、後悔していたが
テレビで見ると何だかつまらなそうだったのでパリはホテル代
も高いらしいしまあ良いか。と言う気分になった。
負け惜しみでは無い・・・と思う。
今日はお休みなさい。