フランスW杯観戦旅行記



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  • 6月10日(水)

    出発の一週間前に買った時計のアラームに起こされた海外での
    初めての朝、天気はあまり良くない。
    どんよりと雲がたれ込め今にも降りそうだ。
    時間が無いのでとっととシャワーを浴びて一階のレストランに
    朝食を取りに行く。そこに居たのは昨夜の細面の怪しい親父
    ではなくて太ってイカした嗄れ声の親父だった。英語で朝の
    挨拶をすると愛想良く英語で返してくれ、紅茶とパンという
    簡単な朝食を出してくれた。
    先客はちょっと無愛想なアラブ系の人が一人だけ居たが、どう
    やら彼もフランス語は分からないようだった。
    とっとと食べてホテルを出る。列車のチケットとかの要領が
    分からないので乗車に手間取るかも知れないと思い、30分前
    には駅に着くように出発をしたのだが余ったフィルムを片付け
    ようと適当に街を撮っていたら13分前になってしまった。
    まあ、何とかなるだろう。
    二人の親父を含め怪しい安ホテルの写真を殆ど撮っていない
    のはちょっと後悔。

    真っ赤な超特急タリスへの乗車は手間取ることもなくスムーズに
    いったのだが駅に着いた時間も遅れ、腹の調子が悪くなり
    直前に駅の売店で使ってしまおうと思っていたベルギーフラン
    (小銭)が残ってしまった。
    当分(ユーロが施行される前に)ベルギーに行くことは無い
    だろうからこの金が使われることは無いのだろうな。
    大した額じゃないから良いのだが、サッカー雑誌の一冊でも買
    っておきたかったな。

    列車に乗って一路パリを目指すのだが列車には様々な・・・って
    言う程でも無いな。
    通勤の人とか日本の新幹線の乗客とそう変わりはない。
    ただ一点を除いて。上にはスコットランドの代表ユニフォーム、
    下には伝統衣装のキルト(チェックのスカート)を履いた強面の
    一団がビールを飲んで乗っているのだ。
    間違い無く開幕戦の対ブラジル戦を観るためであろう。
    私の前の座席に座っている人もそんな一人だった。
    スコットランドからならユーロスターでロンドン経由でパリに
    直接乗り込むのが近いのではと思ったが、後で聞いた話だと
    ベルギー経由でパリ入りの方が安く上がるらしい。
    外の風景は何だか畑ばっかりだ。そういえば新幹線に乗って
    いても外は畑ばっかりだからなあ。何処も一緒か。

    暫くして国境を越えたとのアナウンスが有り、フランスに入った
    らしいのだが外の風景は相変わらずである。
    変わった事と言えばたまに見える家屋のデザインが微妙に違う
    ように感じられるぐらいか。
    工場とかは勿論日本と同じ様なデザインだ。そしてごくたまに
    見掛けられた日本にあるのと同じ様なデザインの集合住宅は
    何だか気分を萎えさせる物がある。
    だが一戸建て住宅等はやはりデザインに気を使っているのか
    新しい家でもいかにもと言った感じのデザインでレンガ色、
    もしくは濃い灰色の屋根が殆どで統一感が取れていて見た目
    にも美しい。

    一時間ちょいでパリに着くと駅には自動小銃を持った軍人が
    居る。警官も勿論銃を持っているのだろうが威圧感が違う。
    もし私がガンマニアだったら「あ、****(銃の名前)だ」
    とか言って喜ぶのだろうが残念ながら詳しくないのでただ単に
    「おっかないなー」と思っただけである。

    今夜の宿泊地ボルドーに行くTGVの発車までは約5時間も
    (しか無いと言うべきか)在るのでパリの街を徘徊してみよう。
    さすがパリ、お店が沢山ある、人も沢山居る、人種も様々白人、
    黒人、アラブ系、ユダヤ人。以外とアジア系が少ない。旅行者と
    思わしき日本人は見掛けるが何故かあまり話しかける気には
    ならない 。

    やはり開幕戦とを数時間後に控えているためだろう。スコット
    ランドのサポーターをあちこちで見掛ける。ビールを飲みながら
    歌を歌ったり気勢を上げている。ぱっと見は結構怖いのだが
    以外と陽気でフレンドリーだ、カメラを向けると肩を組んで歌を
    歌いながらポーズを取ってくれたりする。
    中にはブラジルのユニフォームを着たスコットランドサポーター
    も居る。何だかなあ、まあいいか。
    でもスコットランド人だからってスコッチを飲むって事も無いの
    だなあ。みんなビールを煽っていたから。

    適当に歩いているとはたと気付く、果たして今自分は何処に
    居るのだろうか?
    地図を見ても全然分からない、空が曇っている為自分がどっちに
    進んでいるのかさえ分からない。結構歩いたのでちょっとヤバイ
    かな?と地図を片手に途方に暮れて、もうそこらの人を捕まえて
    聞くしかないなと思ったその時「May I help you?」
    とうら若き女性の声が・・・はっきり言って天使の声にも
    聞こえました。
    多分大学生ぐらいでしょう、金髪で眼鏡を掛けたなかなかの美人
    が一生懸命私も持っている地図と睨めっこをして現在地を調べ
    何処に行きたいのか等をを聞き、教えてくれるのです。
    どうやら私は物の見事に行きたい方向とは逆の方に歩いて
    いたようだ。
    彼女はメトロかバスで行くことを勧めてくれたが歩くのが好き
    だからと断って、英語とフランス語で礼を言って歩いてきた道を
    引き返した。

    この日は妙な天気で夕立のような大粒の雨が5〜10分程
    降っては止むといった事を繰り返していた。
    この季節、フランスは天気が良いと聞いていたので迂闊にも傘を
    持って来ていなかった私はその度に雨宿りに大童になっていま
    した。たまたま隣で雨宿りしていた人と顔を見合わせて「傘は
    持っていないのか。ついてないね」といった会話(?)お互い
    言葉は通じないのでニュアンスで笑ったりしていました。
    土産物の絵はがきやポスターを売っている露天商や路上で絵を
    売っている若者達はさすがにばたばたと大騒ぎをしていました。

    ノートルダム寺院の前では数人の日本人観光客がフランスの
    テレビ局と思われる人にマイクとカメラを向けられインタビュー
    を受けていましたが「日本勝つ!」とか景気の良い事を頭悪そう
    に叫んでいたのが微笑ましかったなあ。
    そして中年サラリーマンと思われる日本人観光客数人が
    地元の(?)中学生ぐらいの女の子と肩を組んで記念写真を撮って
    いたのは良いのだが、その際の下品なたち振る舞いには
    あきれた。
    私のたち振る舞いが上品とは口が裂けても言えないが何処に
    居ても最低限のマナーだけは守るように気を付けてはいるつもり
    だ。彼等の「旅の恥は掻き捨て」といった態度、行動は同国人
    として恥ずかしさを通り越して吐き気さえ催す。

    同じ場所では2人の乞食の少女が乞いに来たがその現実は
    私を更に落ち込ませた。
    ブリュッセルにもこのパリにも乞食は少なからず見掛けたが
    服装や顔つきからすると何処かからの移民かジプシーなので
    あろう。何にせよ子供が紙コップを持って物乞いをして歩いて
    いる姿はいたたまれないものだ。多分何処にでも居るものなので
    あろうが・・・

    パリのモンパルナス駅では噂に聞き、恐れていた英語が
    通じない駅員というモノに出会った。よりによってフランスで
    最初の駅員がこれだよ。パリと言ったら国際的な大都市なの
    だから、しかもその主要駅の一つなのだから英語ぐらい喋れろ
    と思うのだが日本の駅員も大体喋れないな。
    こっちはこっちでフランス語なんか全然分からない物だから
    身振り手振りに書類を片っ端から見せてその場は何とかなった。
    出発前に一応フランス語の入門書は買って目は通したのだが
    少しばっかり単語が話せたところで彼等の言うことは全く聞き
    取れないのだ。
    それを昨日のブリュッセルで思い知り、この旅は英語で通そうと
    決心したのだ。
    だからと言って英語がちゃんと喋れるのかというとそういう訳
    でも無いのが悲しいところだ。

    ボルドーに着いたのは夜の7時位だったがやはり未だ太陽は
    出ている。しかし以外と寒いではないか。話が違うぞ。
    果たしてこれはこの土地特有の気候に因るものかそれとも
    時間のせいか。いやブリュッセルでの同時間より寒く感じる
    事を考えると単に時間のせいとも言えないだろう。
    今度はちゃんと地図を見て歩いたのだが駅からは近い筈の
    ホテルになかなか着かない。地図を見直してみると東西を
    間違えてホテルとは反対の方向に歩いてしまっていたようだ。
    引き返して行くと道中、怪しい男が声を掛けてくる、
    フランス語で何を言っているのか良く分からないがカメラを
    見せてくれとか撮ってやるから貸してくれみたいな事を言って
    いるようだ。強引にカメラを持って行こうとするので「ノン」
    と私が言う。それでも持って行こうとするので彼の手を振り解き
    [Non.Get a way!」
    と睨み付けて言うと彼は渋々立ち去って行った。
    私も振り返らず彼とは反対方向にやや早足で歩きながらも
    後ろの気配にはかなり慎重に気を配って立ち去った。結局
    事無きを得た。が正直かなりびびっていたがこういう時は弱味を
    見せる訳にはいかないだろう。以外と物騒じゃないか。

    しかし何でこんなボロカメラを・・・あ、そうか。私のカメラは
    10年ぐらい前のヤツで意外とごつくその形は一見ビデオカメラ
    に見えなくもない。
    おそらく彼はこのカメラをビデオカメラと勘違いしたのだろう。
    はっきり言って大した機能も無いくせに大きくて重いので買い
    換えたいのだが未だ一応動くし金も無いので仕方なく使い
    続けている。無きゃ無いで困るしね。

    今度はちゃんとホテルの方向に歩いて行く。が、またしても
    ホテルに着かない。
    バス停で地図を見ていると若者が声を掛けてくる。言葉は分から
    ないが助けてくれようとしているらしい。地図を見せると
    一生懸命探してくれる、どうやらどうやら通り過ぎていたようだ
    20mも引き返すと目的のホテルは在った。

    予想通りやや小さめのそのホテルに入ると従業員は丁度
    食事中のようだ。彼等は英語が分からないようで「どおするべえ」
    と私もちょっと戸惑ったが彼等が呼んで来た太った御主人は
    何とか喋れるようだ。お互い片言だが東京で予約した時の
    FAXを見せ予約の確認をすると以外と簡単に話は付いた。

    ボルドーで泊まったこの安ホテルはブリュッセルで泊まったそれ
    と違い清潔で怪しさは無い。何故かベッドはセミダブルで広くて
    良いのだが唯一の欠点としてベッドのスプリングがややへたって
    いたが大した事は無かった。

    夕食は欧州に来て初めてまともなレストランで食った。
    言葉は勿論、食事における流儀、こちらのレストランでは何を
    どう注文すれば良いのか全く分からないのだがたまたま最初の
    ウェイターが英語が喋れたので助かった。
    だが何を注文すれば良いのかは良く分からずウェイターに
    あんたは何が好きだ?と聞くと「私は今腹が減ってるから
    何でも食う」とふざけた答えをする。仕方ないので適当に
    私はシーフードが好きだからそれのあるムニュ(コース)と
    ワインと水を頼んだ。料理は確かに美味かったのだがこちらの
    料理はいかにも太りそうな物ばかりである。道を行く人の多くが
    太っているのも納得がいった。

    ホテルに戻ると丁度テレビでモロッコvsノルウェーの試合を放送
    していた。
    腹一杯になった眠気もサッカーを見ていると目が覚めてくる。
    ハーフタイムにシャワーを浴びて後半も見終わると丁度寝るのに
    良い時間となっていた。

    この辺で今日はお休みなさい。  


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